“保護司制度作りを通じたケニアの「非行」青少年支援”

事業概要

マチャコス地方のムワラ県(13準地区)、アティリバー県(5準地区)を事業対象とし、保護司制度の導入を図った。


カンバの単一民族で構成された農村部(ムワラ県)と都市化が進み多民族が居住するナイロビ隣接地域(アティリバー県)で事業は実施された。


非行少年の社会内処遇を担当する保護観察局と連携して、ケニアでの「脱施設化」の流れを受け、社会内処遇の重要性を地域社会に伝え、保護司がいなかった2県で保護司を初めて選び新任研修を実施。ケニアにおける非行少年の社会内処遇がコミュニティレベルで実現することを目指した。

総計約2,000名のコミュニティ住民が参加した活動を通じて、非行の原因や家庭問題に対する理解を求め、非行少年の社会・家庭復帰への受容(Acceptance)を促した。

非行少年の家庭環境などの背景をみると、彼らも守られるべき子どもだという観点は、コミュニティからおおむね理解され、共感された。

またコミュニティとの対話を通じて、地域住民らの子どもたちを取り巻く課題、特に早期妊娠と薬物依存、適切なしつけや子育て(Proper Parenting)の欠如(育児放棄)についての危機感を把握することができた。

また、保護司の存在により、対象者の家庭の小さな問題にも素早く介入したり、子供の虐待の早期発見につながるなどの効果も見られた。

活動1:関係者会議

・準地区の行政官Assistant Chiefを通じて、地域社会のリーダーを選び、保護観察官と共に、保護観察対象者・非行少年の社会内処遇への理解と受容について求める。

・地域社会内における機能不全家庭の多さや子どもの保護システムの欠如が子どもによる犯罪・非行につながっている現状について聞き取り、話し合った。

・非行少年を含む、特別なケアと保護を必要とする子ども(Children in need of care and protection)への福祉的支援を地域社会に求める。

・計377名の地域住民代表が参加。

活動2:住民集会

・地域行政官のモビライゼーションにより、住民集会を開催。

・計1,617名の地域住民参加により、保護司候補者が選定された。

・保護司の要件、望ましい人物像について説明し、「他薦」により保護司を選出。

・住民集会では、保護観察官と共に社会内処遇の重要性と保護司の役割について説明。

・アティリバー県17名、ムワラ県40名の計57名の新任保護司を選出。

・対象地域18準地区に数名ずつの保護司が選ばれた。

活動3:保護司新任研修

・57名中54名の保護司に対して保護観察本局と合同で新任研修を実施。

・保護司による地域内での非行予防活動は、2020年のコロナ禍により、実施を見送る。

・対象地域に所在する保護観察所の保護観察官も保護司と共に研修に参加し、日本の保護司運用の事例について学んだ。

活動4:保護司による保護観察対象者監督

・個別処遇計画に基づき、地域社会における保護司の役割を決めたうえで、保護司による保護観察及びアフターケア対象者(青少年)の監督・見守りを実施した。

・ムワラ県で8件、アティリバー県で2件、計10件の青少年ケースについて9名の保護司が担当した。

・ケースにより、保護司2名で協力して担当するものや、近隣に住む保護司1名で担当するものがあった。

・10件のケースの対象者の家庭を訪問し、保護司の活動をモニタリング。

・対象者を子どものころから知っている、対象者の通う学校関係者など、地域社会内で対象者やその家族をよく知る保護司が多く、地域社会に属している強みが見られた。

・対象者に対する福祉的支援(食料の提供やお祈り)などを積極的に行った保護司もいた。

草の根技術協力事業の好事例(2022年度版)で紹介されました。一つ目の事例です。
https://www.jica.go.jp/Resource/partner/kusanone/ku57pq00001yv155-att/successful_case_2022.pdf

※JICA東京センター発行の草の根技術協力事業のパンフレットに、本事業が紹介されています!

https://www.jica.go.jp/Resource/tokyo/enterprise/kusanone/ku57pq00000czgpy-att/kusanone.pdf