“コミュニティ内で認知度が低かった児童保護ボランティア(Child Protection Volunteers)を活性化し、子どもたちの保護に役立つボランティア活動を形成“
事業概要
急激な都市化が進むケニアの首都ナイロビに隣接するアティリバー県で、早期妊娠、薬物依存、育児放棄の問題、機能不全の家庭に起因する非行少年問題を解決するために、県内に点在している7名の児童保護ボランティア※の活動を活性化するために、地域社会の他の協力者・関係者の巻き込みと、関係者も含めた研修を行い、活動計画を立てたうえで、地域内での子どもの保護活動を促進した。
※児童局に所属する地域ボランティア
活動1:導入会議
アティリバー県児童官事務所(Athi river Children’s Office)と共同で児童保護ボランティア7名が集合して実施したキックオフ会議。事業の概要の把握だけでなく、ボランティアとしての取り組みや直面している課題についても、全員で共有した。
活動2:7名のボランティア訪問
広大な面積を持つアティリバー県に7名しかいないボランティアの居住・活動地域を訪問し、研修ニーズについて聞き取りを実施。ボランティアたちは各々の職業や地域の特性を生かして子どもの保護の活動に当たっていることが分かった。ボランティアの人数が少なく、それに対して子どもの虐待件数は多い。子どもの遺棄、身体的虐待、性虐待は日常茶飯事であり、思春期の子どもたち~青年の薬物使用も深刻だ。予算もない中、活動の難しさが伺い知れた。
研修ニーズについては、ボランティアに質問用紙への記入も依頼し、把握したところ、薬物使用への対応と子どもの年齢に応じたアドバイスができるよう子どもの発達について、特に学びたいという希望を持っていることが分かった。
アギドゥングリ地区の児童保護ボランティアの訪問。同地区の児童保護ボランティアは障害児学級を開設しており、同校に通う生徒たちが作成したビーズの製品を見ているところ。 マボコ地区の児童保護ボランティア(警察官)の活動地区を訪問し、連携をしている市立小学校のDiamond Academyを訪問した。
活動3:関係者研修
ボランティアが活動している各地区において、児童保護に協力してくれるような関係者と児童保護ボランティアが共に参加する関係者研修を実施した。関係者には村長老など地域の行政官、小学校教員、教会の牧師、救急センター職員、保護司なで、約10名ずつ参加した。
研修の内容は、子どもの発達と基本的権利、児童虐待の種類、性的虐待ケースについて重点を置いた児童虐待ケースと取るべき手続き、若者の薬物乱用における児童保護ボランティアの役割、児童虐待を取り扱う際に必要な基本的カウンセリングの技能についての説明を行った。最後に、児童保護ボランティアと関係者が、より多くの一般の地域住民にも児童保護について理解してもらうため、地域社会内で実施していく情報共有のワークショップ活動の計画を立てた。
ギドゥングリ地区で実施した児童保護関係者研修。研修後の活動計画を立てているところ。 キナニエ地区での児童保護関係者研修。講師のムウェニ氏は、児童心理の専門家で全て地区における研修講義を担当した。 カムル地区での関係者研修。児童担当の橋場が話をしている。
この地区は、ケニアの未来の別事業で研修を受け、活動をしている保護司の2名も参加した。
活動4:ビデオの共有・拡散を通じた情報共有
地域社会内での情報共有ワークショップの実施を始めた2020年4月以降、新型コロナウイルス感染症拡大とケニア政府の対策措置(集会の禁止)に従い、予定していた対面での情報共有のためのワークショップを中止せざるを得ない状況となった。その代替案として、関係者研修で行なった内容(子どもの発達・児童虐待・薬物乱用)をまとめた映像を作成し、映像の拡散でコミュニティでの意識改革を図ることにした。
研修の講義内容からポイントを抽出し、一般の住民でも理解がされやすいよう、スワヒリ語を交え、事例も加えながらボランティア4名が代表として講義を担当し撮影した。7名の児童保護ボランティアが中心となり、対象地区のコミュニティーグループ、ソーシャルグループ(教会や学校など)、他の児童保護ボランティア、若者、子どもと家族など約220名に対して、ビデオリンクを共有したり、直接人々に見せたりしながら、児童保護に関する情報共有を行った。
活動5:児童保護ボランティアの活動モニタリング
当団体の現地スタッフが電話やソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を活用し、児童保護ボランティアの活動する各地区へ実際に訪問して、各児童保護ボランティアの活動する地区の関係者へビデオ共有や情報伝達の状況把握のためのモニタリングを実施。モニタリングでは、ビデオを共有したグループや人数、活動の成果と困難であった点、その点の解決のための対策、提案などの聞き取りを行った。
ギドゥングリ地区のボランティア活動のモニタリング訪問を実施した。
研修に参加した地域ボランティアのキマニ氏に子どもの保護の情報ビデオの共有の活動について聞き取りを行った。自宅に50人ほどの人が集まる会議の際に、PCでビデオを上映して説明を行ったとのこと。モニタリングで訪れ、話し合いを行ったゾイアニ地区のボランティアたちとケニアの未来現地補助員のカンダリ。この周辺には不法アルコール販売の犯罪が多く、ボランティアの地域活動は重要である。
ボランティアや関係研修に参加したコミュニティ住民たちの声の一部
「小学校で保護者や教員に対して児童保護や虐待についての情報を共有する必要性は高い。地域の学校でワークショップを行うべきである。」(児童保護ボランティア)
「パンデミックの状況下でビデオを活用した人々への知識の普及方法は安全で良かった。」(児童保護ボランティア)
「ビデオの内容が興味深く、コロナ禍においてビデオを通した児童保護に関する知識の共有方法を推奨する。」(活動地区の関係者)
「映像のデータをパソコンで50人の参加者に対して見せることができた。情報は、地域で見られる子どもの問題に対処するために有益。」(活動地区の関係者)
「スワヒリ語を使っていることから、誰にでもわかる内容になっていた点が良かった。」(活動地区の関係者)